社会構造が変遷するなか、医療制度や医療産業に係わる各種施策についても、我が国は大きな転換点に立たされていると推察されます。特に将来、ライフサイエンス分野で新たに産業を創出させるためにも、また医療財源を始めとする社会保障費へ社会資源を適切に配分するためにも、さらに患者家族が優れた診療技術へ迅速にアクセスし人生の価値を向上させるためにも、医療のあり方を医学面のみならず経済面などから論じることが、我が国の持続的な発展において喫緊の課題となっていると考えられます。

　これらを背景に本講座では、“医療分野の価値評価”などに係わる理論の構築や実証の研究を中心に、将来の健康システム（臨床・制度と経済・産業）を論じていきます。対象とする領域は、臨床機序や健康社会を新たに創出する際に必要となる、研究制度や薬事制度、医療保険制度または医療特許制度などの政策、および社会基盤や価値創造のあり方などに関する分野になります。これら臨床応用の研究と制度関連の設計に係わる検討の密接な連携を志向することで、次に挙げる二点が主な成果として期待されます。

　第一に、新たな臨床モデルの創生と次世代産業の振興に資することにあります。具体的には、新技術の臨床応用や社会普及を合理的な議論によって推進するための手法の開発や産業の発展モデルに係わる方法論の研究となります。第二に、将来の社会システムや国際活動の基盤強化に資することにあります。具体的には、多様性が増すライフスタイルやグローバルスタンダードについて、それらの影響要因の構造化や付加価値の定量化を進め、必用に応じてニューパラダイムの在り方を深耕いたします。

　 このような理念のもと、本講座は「医療の価値（Value）の伝道者（Evangelist）」を標榜しつつ、係わる研究に邁進していく所存であります。